爺さんが退院して来るので、奥さんは朝から忙しい。
そして男治郎の後追いも、甚だ忙しい。
奥さんの姉ちゃんも来ていて、普段いない人を見た繊細な男治郎は、新しく買った座布団にオシッコをした。
午前中に2回も洗濯機が回る。
まるで大家族の家みたいだ。
増えたのは大きな子犬一匹だが。
爺さんを連れて帰って来た奥さんが我が家のピンポンを押すと、一気にテンションが上がった男治郎が、転びながら出迎えに行く。
でも、そこでまた知らない人を見た男治郎は、パニクって動きがバグり、僕の元に帰ってきて喜んでいた。
そして、一応は僕を親分と思っているようで、僕に「知らない人がいるよ」と報告をして、僕の後ろに隠れた。
番犬とは何だろうか?
しかし、こういう所がやはりカワイイ。
僕は爺さんと出会って二十年近くになるが、爺さんは本当に喋らない男で、今まで話した時間を合わせても三十分いかないと思う。
そんな爺さんに「男治郎カワイイやろ?」と聞いたら「カワイイ」と言っていたので、一目で男治郎を気に入ったのだと思う。
以前の爺さんは散歩に行きたがらなかったが、今日の爺さんは男治郎と嬉しそうに散歩に行こうとする。
散歩のスピードも、爺さんのヨチヨチ歩きと男治郎のヘンテコ歩きがマッチしているんだと思う。
今日の男治郎は朝寝を少しと、昼寝が全然できなかったので、夜は寝惚けてイモムシみたいな動き方だったが、人を癒せる凄い犬だと感じた。
娘たちが人から褒められると自分のことより嬉しいように、男治郎が人からカワイイと言われたり、男治郎を見て喜んでもらえると、とても嬉しい。