
男治郎が泣いている
朝から誰も居なくなるため、テレワーク中。
【僕がキッチンでパソコン作業をする】
この状況が、幼い男治郎がこの家にやって来た時と同じだから、小さい頃を思い出して落ち着くのか、男治郎は良く眠る。
僕が居ることで犬が安心して眠れるなら、男冥利に尽きる。
番犬のボディーガードという、鉄壁と呼べる立ち位置だ。強そうでいい。
男治郎をトイレのために外に連れ出し、ウンコが終わったから家に帰ろうとすると、男治郎が奥さんが帰って来るであろう方を見て、立ち止まる。
(いつ帰って来るんだろう?)
(確か大切な人がいた気がする)
(アッチに何かあるかなあ)
男治郎が何を考えて、何を気にしているかは想像するしかないから、つい色々と考えてしまう。
お前をこの家に連れてきたのはヤツだし、毎日一緒に寝てくれるのもヤツだもんなぁ。
もう忘れたかもしれないけど、お前には大切な存在があったんだよ。
そんな男治郎は悲しみか寂しさからか、父の後を常に追っている。
だいたい僕が居るところにやって来る習性があるけど、今日は僕が立ち上がる度に首をシュッと伸ばして確認もしている。
そんなに動作早かったか?男治郎。
まったく甘えん坊将軍さまが過ぎる。
しかし、今日は僕が立ってトイレに行こうとしたら「ソン!ソン!」おしとやかに吠えるから、戻って寄ってグリグリ撫でてあげたら「グェボォ!」多くのゲロを僕のズボンにぶちまけた。
僕は本当に男治郎を自分の子供と思っているらしく、ゲロをかけられたのに「大丈夫か男治郎!」ゲロをかけた方を心配した。
長女がテキパキとゲロの処理をして、僕も洗濯物を片付けて、2人で男治郎を心配して撫でていたら「ズズーッ・・ズズーッ・・」小さい子供が泣いて鼻をすするように、男治郎は泣いていた。
2歳だけど30kgもあって、イカつい顔で、肩からの筋肉なんてホレボレする、猛犬づらの男が泣いている。
小さくて白いお地蔵さんみたいに肩を落として丸まって、泣いている。
「お前は本当に寂しがりだなぁ」
僕は笑って言ったけど、男治郎の寂しさに触れて、これからも男治郎にちゃんと優しくしてあげようと決めた。